うっとりと彼女はそう言ったが――。
 俺には、その言葉に続く、ファルさんの言葉が頭の中で鳴り響き、一瞬にして暗い気
持ちになった。

「それってきっと」

 ――やめてくれ。

「あなたの心が」

 ――その先は。

「すごく綺麗だからね」

 きれい?
 思わずそう聞き返そうとしたが、言葉にはならなかった。

「他の詩も、見てみたいな」

「……大したこと、ありませんよ」

 かろうじてそう言ったが、マリアさんは心底驚いたような顔で続けた。

「どうして? すごく良い詩だと思うわよ。自分でもそう思わないの?」
「それは……そう、思って……書いているつもりではありますけど……」
「なら、もっと自信をもったほうがいいと思うわ。あなたの言葉、私、すごく好きよ」

 そう言って、楽譜を手に取り、彼女は指でなぞるように楽譜に書かれた詩を再び読み
始めた。そして、小さくつぶやく。

「綺麗な、言葉」
「でも俺は……別に、綺麗な心なんかもってませんけどね」

 精一杯の強がり……のつもりだったが、なんとも自嘲的な、嫌な言葉になった。

「そう? 私はそうは思わないけど」
「まだ出会って間もないのに?」
「だってこれ、あなたが書いたんでしょ?」
「詩は……願望だからですよ。だから綺麗に見えるんです」
「すてきなことじゃない。だって、それがあなたの本当の心なんでしょう?」

 意外な言葉に、驚かされる。さっきから、ずっと彼女のペースだった。

「悩んだり、失敗したり――それって、すごくすばらしいことじゃない。恥ずかしがる
ことなんて、どこにもないのよ」

 見透かされた……と思ったが、嫌な気持ちはしなかった。彼女が口にしたほとんどは、
詩の中にある言葉からの抜粋だ。
 それより――なによりも、受け入れられた、という気持ちの方が強かった。

「もっと聞かせて、あなたの言葉」
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